友人との何気ない会話の中で、「そういえば、うちもそろそろ相続のこと考えないとね」と言われて、少しドキッとしたことはありませんか。
相続という言葉を聞くと、なんだか難しそうな書類や、家族で話し合わなければいけない重たいテーマが浮かんできます。まだ元気だし、子どもたちに心配をかけたくない。そんな思いから、「まだ先のこと」と目を逸らしてしまう気持ち、とてもよくわかります。
でも、相続というのは、本当は「何を残すか」だけではなく、「どう想いを引き継いでいくか」という、もっと温かいものなのかもしれません。
今日は、そんな視点から、相続という言葉の向こう側にあるものを、一緒に考えてみたいと思います。
目次
多くの人が抱く「相続」へのイメージ

相続と聞いて、まず思い浮かぶのは、おそらく「財産の分け方」や「税金の手続き」ではないでしょうか。
確かに、それらも大切な要素です。でも、多くの方が「自分にはそんな大した財産もないし」「うちは兄弟仲がいいから揉めない」と感じていらっしゃいます。実際、そう思うことは自然なことですし、間違っているわけでもありません。
ただ、相続を「お金の話」「法律の話」だけだと思っていると、本当に大切なことを見落としてしまうことがあります。それは、あなたがこれまで大切にしてきた想いや、家族への気持ちです。遺されるものは、通帳の数字だけではありません。
「心の相続」という、もう一つの道

ある方が、こんなことをおっしゃっていました。「母が亡くなったとき、財産よりも、母が書き残してくれた手紙に救われた」と。
その手紙には、特別なことは何も書かれていなかったそうです。ただ、日々の暮らしで感じていたこと、子どもたちへの感謝、これからも元気でいてほしいという願い。それだけだったのに、その言葉が、家族の心をつないでくれたのだそうです。
これが、私が「心の相続」と呼んでいるものです。形のあるものを分けることよりも、想いを引き継いでいくこと。あなたがどんなふうに生きてきたか、何を大切にしてきたか。それを、言葉にして残しておくことには、大きな意味があります。
もちろん、手紙を書かなければいけないわけではありません。家族との会話の中で、少しずつ自分の気持ちを伝えていくだけでもいいのです。
家族関係が複雑でも、できることはある

「うちは離婚していて」「子どもとあまり連絡を取っていなくて」。そんなふうに、家族関係が複雑だと感じている方もいらっしゃるかもしれません。
そういう場合こそ、実は「心の相続」が力を発揮します。関係が遠くなっているからこそ、今のうちに、少しずつ気持ちを伝えておくことが大切なのです。
それは、大げさなものでなくていいのです。年賀状に一言添える、誕生日にメッセージを送る、たまに電話をしてみる。そんな小さな積み重ねが、後になって「ちゃんと想ってくれていたんだ」という安心につながります。
完璧な関係である必要はありません。ただ、「忘れていないよ」という気持ちを、何らかの形で伝えておくこと。それだけで、相続という出来事が、もう少し穏やかなものになります。
今の自分にできる、無理のない一歩

では、具体的に何から始めればいいのでしょうか。
まずは、自分の気持ちを整理することから始めてみてください。ノートに、思いついたことを書き出してみるのもいいでしょう。「子どもたちに伝えたいこと」「大切にしてきたもの」「これからどう暮らしていきたいか」。
そして、少しずつ、家族との会話の中に織り込んでいきます。「私が使っていたこの食器、気に入ってるから大事にしてほしいな」「あの写真、家族の宝物だと思ってるんだ」。そんな何気ない言葉でいいのです。
エンディングノートを書くのもひとつの方法です。ただ、最初から完璧に埋めようとしなくて大丈夫。少しずつ、書ける部分から埋めていけばいいのです。
大切なのは、「やらなきゃ」と追い込まれることではなく、「今の自分にできること」を、自分のペースで進めていくことです。
「今日から終活」という時間の意味

終活という言葉も、相続と同じように、少し重たく感じるかもしれません。でも、終活は「人生の終わりに向けた準備」というよりも、「これからの時間をどう生きるか」を考える作業なのだと思います。
自分が何を大切にしてきたのか、これから何を大切にしたいのか。それを見つめ直すことで、今の暮らしがもっと豊かになることもあります。
相続についても同じです。「何を残すか」ではなく、「どう生きて、どんな想いを引き継いでいくか」。そう考えると、相続という言葉が、少し柔らかく感じられるのではないでしょうか。
今日から、少しだけ。まだ何も決めていなくても、何も書いていなくても、それで大丈夫です。
ただ、「そろそろ考えてみようかな」と思ったこの瞬間が、あなたの終活の、そして心の相続の、はじまりなのですから
相続会議
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