こんにちは。終活コーディネーターの吉原友美です。終活というと、「自分の人生の終わり方を考える準備」として、まだまだ“先のこと”と思われがちかもしれません。ですが最近では、「もしものときに、家族が困らないように」「自分の意思をきちんと伝えておきたい」と考える方が、世代を問わず増えてきています。そして、終活を考える中でよく聞かれるのが──
「本当は、子どもに話しておきたいことがある」「でも、どう切り出していいかわからない」「迷惑に思われるんじゃないかと心配で…」という、“親から子へ伝えたい気持ち”がうまく伝わらないままになっているケースです。
このコラムでは、そんな「話したいけど話せない」気持ちに寄り添いながら、親が終活を一歩進めるためのヒントをお届けしていきます。
目次
子どもには言いにくい、でも本当は伝えたいこと
終活に真剣に取り組んでいる親世代の方ほど、こんなふうに悩まれています。
「準備はしているけれど、子どもが全然関心を持ってくれない」
「大切なことを伝えたいのに、肝心な話になると話題を変えられてしまう」
「口うるさいと思われそうで、自分から言い出せない」

親としては、「自分のことは自分で決めておきたい」「子どもに負担をかけたくない」と思っている。
でも、その思いをうまく言葉にできないまま、なんとなく先送りにしてしまっている。
そんなケースがとても多いのです。
本当は、こんなことを話しておきたい
親が子に「元気なうちに伝えておきたい」と感じていることには、いくつかの共通点があります。
特別なことではありません。けれど、いざという時にはとても大きな意味を持つことばかりです。
これからの生活や介護についての希望

「介護が必要になったら、できれば自宅で過ごしたい」
「できるだけ家族に負担はかけたくない」
「延命治療は望まない」
これらは、普段の会話ではなかなか出てこないテーマですが、家族で共有しておくことで、判断に迷う場面で大きな助けになります。
お金や契約、相続のこと

預金・保険・年金などの口座や契約の管理方法
借入や保証人など、子どもが知らない情報の存在
相続について、遺言や希望があるかどうか
「お金の話なんて……」と思われがちですが、トラブルを避けるためにも、正直に話しておくことが信頼につながります。
葬儀やお墓についての思い

「葬儀は家族だけで簡素にしてほしい」
「お墓は守っていかなくていいようにしたい」
「宗教にはこだわらないから自由にしてほしい」
最期のかたちは、その人らしさを表す大切な要素です。
子どもに任せるのではなく、自分の希望を残しておくことは“自立した終活”の一歩になります。
どう話せば、子どもは受け入れてくれる?

「終活の話をすると、子どもが嫌がる」という声もよく聞きます。
でも、伝え方を少し工夫することで、驚くほどスムーズに受け止めてもらえることもあります。
たとえば……
「最近、友達が急に入院してね。私もちゃんと準備しなきゃと思ったの」
「エンディングノートっていうのを書いてみたんだけど、あなたにも一度見ておいてもらえたら」
「今は元気だけど、これだけは知っておいてほしいな」
“重く言わない”のがポイントです。
何かをお願いするというより、「情報を共有したい」「気持ちを知っていてほしい」というスタンスで話すと、子どもも構えずに耳を傾けてくれます。
もし会話が難しいなら、“書いて伝える”という方法も

どうしても言い出せない、聞いてもらえない、そんなときは、書いて伝えるという方法もあります。
エンディングノートに希望や気持ちをまとめておく
通帳や保険の保管場所をリストにしておく
必要なときに「このノートを見てね」と一言だけ伝えておく
書いておくことで、言葉にしにくいことも落ち着いて伝えられますし、子どもも「タイミングが来たら読もう」と心の準備ができます。
終活は“死の準備”ではなく、“安心の準備”

終活という言葉には、どうしても「終わり」「別れ」といったイメージがついてまわります。
けれど本当は、これからの人生を、安心して生きるための準備でもあります。
そして、その安心は“家族との共有”から生まれるものです。
何もすべてを今すぐ決めなくていい。
でも、伝えておきたいこと、残しておきたい気持ちは、元気なうちだからこそ伝えられる。
終活の一歩は、大げさな準備ではなく、ほんの小さな「聞いてほしい」の気持ちから始まります。
おわりに:子どもに伝えるのは、「わがまま」ではなく「愛情」
親が終活の話をするのは、子どもに負担をかけるためではありません。
むしろ、子どもを困らせないため、迷わせないための思いやりです。
だからこそ、その思いは、どうかためらわずに伝えてください。
最初はうまくいかなくても、一言残しておくだけで、子どもにとっては大きな安心になります。

「元気なうちに話せてよかったね」──そう言い合える親子関係こそ、終活がもたらす最高のギフトかもしれません。
 
							 
						 
			 
					 
				







