身近な方を亡くした人に、何か言葉をかけたい――でも、どんな言葉が正解なのか、間違っていたらどうしようと不安になったことはありませんか?
特に葬儀の場では、あいさつひとつに迷いが生じることも多いものです。
終活を意識しはじめた世代の私たちにとって、「見送る側」になる機会も増えていきます。
そんなとき、悲しみの中にいる方に対して、少しでも心に寄り添える言葉をかけられたら、それは大きな力になります。
このコラムでは、“グリーフケア(悲嘆ケア)”の観点から、葬儀の場での自然で思いやりのある声のかけ方をお伝えします。
「言葉にしよう」と思わなくても大丈夫
大切なのは、「正しい言葉」よりも、「心があること」です。
たとえば、「かける言葉が見つかりませんが、お気持ちを思うと胸が痛みます」など、無理に前向きなことを言おうとせず、率直な気持ちを伝えることが、かえって相手の心に届くことがあります。

NGワードを知っておくと安心

グリーフケアの視点では、次のような言葉は避けた方がよいとされています。
「早く元気になってね」
「時間が経てば楽になるから」
「あなたなら大丈夫よ」
これらは励ましのつもりであっても、相手の悲しみを否定してしまう可能性があります。
悲しみには正解も期限もありません。
「ただ、そばにいる」という姿勢が、最も相手に届く寄り添いになります。
おすすめの言葉がけ3選
「どうかご無理なさらずに」
疲れている喪主の方には、何よりもいたわりの言葉が嬉しいものです。
「〇〇さんとの思い出、忘れません」
故人の存在が確かにあったことを伝えることは、遺族の癒しになります。
「何かあればいつでも連絡ください」
具体的な支援よりも、「気にかけてくれている」という気持ちが支えになります。
沈黙もまた「言葉」のひとつ

言葉をかけることだけが寄り添いではありません。
静かに手を握る、肩にそっと手を置く、目を合わせて深くうなずくだけでも、相手に伝わるものはたくさんあります。
グリーフケアでは、“聴く”こと、“そばにいる”ことをとても大切にします。
自分の「気まずさ」ではなく、相手の「心」に意識を向ける
声をかけるとき、私たちはつい「変に思われないかな」「泣かせたら申し訳ないな」と、自分の気まずさに目が向いてしまいます。
けれど、相手の立場になって考えると、どんな言葉でも思いのこもったひと言は嬉しいものです。

完璧な言葉はなくていいのです。
「心を込めて、そっと声をかける」。
それが、何よりのグリーフケアです。
悲しみに暮れる方に、何かできることがあるとすれば、それは「そばにいてくれる安心感」かもしれません。
私たちが終活を進める上でも、人生の最期の場面に、温かいまなざしを向けられる人でありたいですね。